いまだから知りたい元素と周期表の世界
発行日: 2010/9/7
ISBN: 440845298X
頁数: 304頁
本体価格: ¥1,000(税抜)
発行部数: 16,000部(2011/4/21現在)
はじめに
それまでは、「しちめんどくさい」化学の教材にすぎなかった周期表にスポットが当たったのは、2003年に文部科学省が科学技術週間の一環として「一家に1枚周期表」を制作し配布したことがきっかけのようです。この翌年には、日本が第113元素発見の一翼を担っています。この元素にはまだ名前がつけられていないので、もしかすると近々、新元素「ジャパニウム」が登場するかもしれません。ヒッグズ粒子や超対象粒子の発見とどちらが先でしょうか。
1950年代から主張されてきた、元素の宇宙での合成過程の理論もおおむね支持を受けるようになりました。恒星での核融合のプロセスでは鉄までしか生まれず、それより重い元素はすべて、超新星爆発において生まれた、とするものです。
そして最近は「レアメタル」あるは「レアアース」という希少金属が、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、燃料電池や太陽電池あるいは超電導磁石の材料やレーザー発振の結晶の材料として大きく脚光を浴びています。
かたやこれら希少金属の産地は、中国など数少ない国に集中しており、何らかの支障が生ずれば、希少金属の供給が滞ったり市場価格が暴騰したりします。そうするとレアアースの最大消費国である日本の産業に多大な影響が生じます。このような危機に備えて、現在は7つの元素が、国家と民間の協力によって備蓄されています。
著者は、周期表とはどういうものか、元素はどのように合成されたのか、ということをわかりやすく解説したいとつねづね思っておりましたが、今回機会を得て本書の著作に至りました。
本書では、文系の方々にもご理解頂けるように配慮しました。化学の素人の方々にとっては「忌まわしい」であろう化学反応式や結晶構造うんぬん、というものは一切省き、身の回りに現れている元素の特性を中心として解説するとともに、国産・輸入の割合、あるいは生産国の生産割合や輸入相手国などを解説しました。数値を出すと読みにくくなるので、数値はほとんど省き、グラフで表現しました。
読者の方々のご理解の一助となれば幸甚です。
2010年7月 著者
第1章 元素と周期表のしくみ
1 元素とは何だろう?
2 物質の特性の違いは何から生ずるか?
[ コラム ]化学結合の種類
3 周期表が発見された!
4 周期表の構造はどうなっているのか?
5 電子の配置のしくみはどうなっているのか?
6 ランタノイド・アクチノイドはどうして欄外に表記されるのか?
7 アルカリ金属・アルカリ土類金属とは何か?
[ コラム ]一家に1枚周期表
第2章 宇宙における元素合成
1 物質の生成は「ビッグバン」から始まった!
2 宇宙の歴史の始まり…4つの力の分化と核子の生成
3 宇宙で水素やヘリウムの合成が始まる!
4 宇宙でヘリウム以上の元素の合成が始まる!
5 恒星や超新星爆発ではどのように元素が合成されるのか?
6 宇宙・地殻・人体の元素の構成割合は?
7 原子が放射性崩壊するとはどういうことか?
[ コラム ]センター試験に出題された元素組成
第3章 注目されるレアメタル
1 レアメタルやレアアースとは何か?
2 レアメタルの需要と供給はどのようになっているのか?
3 レアメタルについての各国の対応はどのようなものか?
4 レアアースの主な鉱物と産地
[ コラム ]元素発見のストーリー
第4章 わかりやすい元素大図解
1 水素:クリーンエネルギーの代表選手
2 ヘリウム:安全でもっとも軽い気体元素
3 リチウム:二次電池で大注目の金属
[ コラム ]リチウムの標準電極電位
4 ベリリウム:高機能でも有害な金属
5 ホウ素:ダイヤモンドに次いで硬い元素
[ コラム ]モース硬度表
6 炭素:ダイヤモンドと黒鉛は炭素の同素体
[ コラム ]炭素の同素体
7 窒素:功罪なかばする窒素化合物
8 酸素:植物が放出し動物が吸収する
9 フッ素:何とでもすぐに化合する元素
[ コラム ]元素の電気陰性度
10 希ガス元素:非常に安定して軽い元素
11 ナトリウム:高速増殖炉と花火に必須
[ コラム ]アルカリ・アルカリ土類・同族の炎色反応
12 マグネシウム:次世代を開くか
13 アルミニウム:電気の缶詰
14 ケイ素:半導体と太陽電池を支える
15 リン:多種多様な同素体がある元素
16 硫黄:かつての黒色火薬の原料
17 塩素:塩の電気分解で製造
18 カリウム:ナトリウムより反応が激しい元素
19 カルシウム:もっとも軽いアルカリ土類金属
20 スカンジウム:他の金属を助けるレアアース
21 イットリウム:YAGレーザーで有名なレアアース
22 軽希土類元素は何に使われるのか
23 重希土類元素は何に使われるのか
24 チタン:強度2倍の超合金
25 バナジウム:鉄やアルミ合金を強化
26 クロム:メッキとステンレス鋼に必須
27 マンガン:マンガン鋼や乾電池に使われる
28 鉄:超高純度鉄は白く輝く
29 コバルト:リチウムイオン二次電池に必須
30 ニッケル:硬貨と二次電池に必須
31 銅:電気伝導率が高く比較的安価
32 亜鉛:メッキはトタン、おしろいが画期的
33 ガリウム:ガリウムヒ素と青色LEDが期待
34 ゲルマニウム:トランジスタから触媒・添加材へ
35 ヒ素:石見銀山から液晶ガラスへ
36 セレン:レアメタルで日本が世界最大の産出国
37 臭素:貝紫と強力な消火剤の成分
38 ルビジウム:需要の少ない副産物元素
39 ストロンチウム:X線遮蔽ガラス材料
40 ジルコニウム:ファインセラミックス材料
41 ニオブ:鉄鋼添加材や超伝導磁石に使われる
42 モリブデン:鋼を強化する
43 テクネチウム:脳梗塞・心筋梗塞の治療に使う
44 ルテニウム:レアメタルではない希少金属
45 ロジウム:三元触媒と柔らかい貴金属の保護
46 パラジウム:三元触媒と水素吸蔵合金
47 銀:高価だが超高性能金属
48 カドミウム:去りゆく金属
49 インジウム:FPDや有機ELに必須
50 スズ:ブリキ・ハンダ・青銅・ITOに使われる
51 アンチモン:軟金属の硬度を増す有害金属
52 テルル:鉄鋼強化と化合物半導体に期待の有毒金属
53 ヨウ素:有毒ながら微量は必須元素
54 セシウム:原子時計で秒を定める
55 バリウム:胃検査・鉛蓄電池・超伝導体
56 ハフニウム:熱中性子の吸収率が最大
57 タンタル:携帯電話などに必須の元素
58 タングステン:超硬・超重金属
59 レニウム:融点・強度・電気抵抗・耐食性が高い
60 オスミウム:非常に硬く重い白金族元素
61 イリジウム:超硬合金と非破壊検査に使われる
62 白金(プラチナ):触媒としてもっとも重要
63 金:高価だがLSIやメッキに必須
64 水銀:使われなくなった毒性液体金属
65 タリウム:特に毒性が強い重金属
66 鉛:鉛蓄電池が最大需要、問題点は慢性毒性
67 ビスマス:鉛の代替・新電子素材として期待
68 ポロニウム:キュリー夫妻の命を奪った放射性元素
69 アスタチン:半減期が非常に短く不安定
70 フランシウム:キュリー夫人の助手が発見
71 ラジウム:ウランの300万倍放射能
72 放射性元素ばかりのアクチノイド元素
[ コラム ]ランタノイド元素発見のストーリー
73 ウラン:原子力発電のエネルギー源
74 トリウム:クリーンな原子力を可能にする
75 東京オリンピック以降に発見された元素
[ コラム ]超重元素発見のストーリー
